[準備運動は怠るべからず]
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エピソード

[準備運動は怠るべからず]
パンッ、という小気味の良い音が
プールサイドに響く。
白いボードの前に立ち、2人のウマ娘を
指導するのは、イクノディクタスだ。

「いいですか、ターボさん。
準備運動もせず水の中に入ろうなどと
は言語道断。いくら身体能力に恵まれた
ウマ娘であれど、油断すれば
命に関わります。わかりますか?
まずは筋肉を伸ばし、しっかりと――」

「うう、わかったってばぁ。長いよ~」

「タンホイザさんも、
ボーッと見ていないで柔軟を!
屈伸と前屈は、しっかりと筋を意識して、
順序はこちらに書き出した通りに。
これを守って行えば、通常よりもさらに
大きな成果が得られるはずと――」

「は、はい~!」

2人のやり取りを見守っていた
マチカネタンホイザもまた、
イクノディクタスからありがたい
お説教を受けていた。

「脚を大切にしてください。
無茶をしてケガなど、絶対にしないように」

思わず「もうほっといてよ~」と
愚痴をこぼしたくなったツインターボも、
この一言に素直に従った。
……ただ説教をしたいわけではない。
彼女は仲間を想っている。だからこそ――

「――それでは、もう1度初めから。」

……こうして、何度も繰り返し
準備運動の大切さを叩き込んで
いるのだろう。

「えー!!」という声が、
今度はプール全体に響き渡り、
イクノディクタスのストレッチ指導は、
その後も長々と続いたのだった。
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