軽妙な旋律が踊り手たちを囃し立てる。
音色に乗せて扇子を回せば、
夜空の月が欠けて映った。

「はっ、はあっ！」

提灯の明かりは煌々と眩く。
見物客の目は爛々と輝く。
されど舞いを奉じる1人の少女は、
それより遥かな先を見ていた。

（ちゃんとできてる。……でも、
これじゃ今までのあたしと変わんねぇ！）

「もっと……もっと！」

「ユキノちゃん、飛ばしてきたね♪
よーし、カレンも！」

「2人ともヒートアップして――
うん、アタシだって……！」

追いつけ、追い越せと囃子も走る。
そこ行く少女の流転に合わせ、
揺蕩う祭りの趣が浮かぶ。

「まだまだこっから！
あたしだって、祭りの主役なンだ！」

誰もが笑い、誰もが続く。
今宵は長き祝いの舞台。
華の都に負けぬ賑わい……。