「わーっはっはっはっ！
見たまえ、諸君！
この艶！　色！　大きさ！
どれをとっても一級品じゃないか！」

「おおおっ！
なまら美味しそうなにんじんだべ～♪」

「本当！　こんなに立派なにんじんが
たーくさんっ！　どんな料理にしようか、
今から迷っちゃうね～♪」

「って、おいおい理事長！
尻もちついちまってるじゃねーか……！
そんな泥だらけになっていいのかよ！？」

「なんの、なんの！　むしろ誇らしいぞ！」

「君たちが、手間暇かけて育てたのだ。
愛を詰め込んで育てたのだ。
そんなにんじんに、全力で向き合える！
なんと幸福なことだろう！」

「その結果泥まみれになるのなら、
それはむしろ大歓迎！
理事長冥利に尽きる！」

「さあ、どんどん掘り起こそう！
君たちの愛は、君たちを作り、
夢へとつなげてくれるだろう！」

「激賞ッ！　さあ、全てを力に
いざ進みたまえ、若者たちよ！」

「理事長さぁん……！
はいっ！　このにんじんさんたちも
連れて、日本一の舞台に立ちます！」

「きっとおいしく料理するからね！
そうしたら、理事長さんも食べにきてね！」

「うむっ、うむ！
期待をしているぞ！」

「……ん？　なぁ、あっちから
すっげー勢いで走ってくるのって――」

「うふふ、理事長？
この後の会議、お忘れですか？
そんな泥だらけになって……」

「驚愕ッ！！　た、たづな……
若者たちよ、わたしに構うな、振り向くな！
進めッ、進めーーッ！！」