「札幌って、本当に街並みが
碁盤の目みたいになっているんだね。
ふふ、ブロックで作った模型みたい！」

さっぽろテレビ塔の展望台から
街を見下ろしながら、無邪気に笑う。

公務とレースの間にできた空き時間に、
ファインモーションと来た札幌観光。
SPたちは彼女の観光を邪魔しないよう、
隠れて見守っているらしい。

「先に時計台で札幌の歴史について
学んでよかった。背景を知って、実際に見て
その土地への理解が深められた気がする！」

目新しい景色を食い入るように見つめ、
スマホのシャッターを切る。切る。
夢中になる横顔を、こちらもスマホで撮る。
その場で共有すると、
いい写真だと満面の笑みを向けてくれた。

「さて、次は食事だね。その土地ならではの
グルメをたくさんいただかなくちゃ！」

テレビ塔を降りて大通公園に来たところで、
スマホとガイドブックを取り出す。
どちらもブックマークや色ペンの書き込みで
いっぱいだった。

たっぷりコーンとバターの味噌ラーメンに
魚介だしの効いた醬油ラーメン、
とんこつラーメンに塩ラーメン――
どれも美味しそうだが、見ているだけで
胸やけがしてくるボリュームだ……。

「ふふっ、朝ご飯を我慢してきたから
お腹ペコペコ！
1軒目はネギとチャーシュー増し増しで
いこうかな♪　味玉も追加しちゃおう！」

もはやその土地を知るためなのかは疑問だが
彼女は目をきらきらとさせている。
要らぬ遠慮をさせまいと、
こちらも1段階ベルトを緩めた――